DX基盤全体像の紹介

今回は、DX基盤全体像ご紹介をさせていただきます。

まずは、某大手コンサル会社が描いたDX基盤を基に作成した以下の図をご覧ください。左側にシステムを開発したり、運用保守するための「共通インフラ」の仕組み、右側に実際に稼働するシステムが配置されています。


共通インフラ(コミュニケーション・セキュリティ・ DevOps)


左側の「共通インフラ」には、コミュニケーション、セキュリティ、 DevOpsとあります。

コミュニケーションは、社員の誰もが使う重要なツールで、最近はコロナ禍でZoomなどのWeb会議ツールが注目を集めています。メールよりもSlackやTeamsなどのチャットサービスを利用する企業も増えてきました。更に、最近はより長文のノウハウや、タスクを共有できるNotionなどのツールも注目を集めています。

また、セキュリティについては、今後は更に攻めの姿勢が重要となります。これまでは、セキュリティというと、内側と外側を分けて如何に守るかの姿勢が重視されてきました。しかし、これからは、クラウドなどでシステムの境界線がより分かりにくくなるのに加え、社員のリモートワークで更に複雑化します。これらに加え、企業の人材も経営層や社員、パートやアルバイトだけでなく、社外相談役や副業人材といった社外人材のパートナーが増えるなど、より多様な人材と連携しながら仕事を進めるようになってきました。このように複雑化する仕組みに対して後手に回ると社外との連携はしにくくなりますし、制御しようとしても、社員が自己判断で外と繋がってしまうなど、思わぬリスクが潜在化している状況です。知らないでは済まされない現実を受け止めて、より攻めの姿勢が重要となるでしょう。

DevOpsについては、これだけで数時間も語れる領域となるため、この場では割愛しますが、エンジニアだけが意識すれば良いことではなく、経営層もこれらの取り組みについて、言葉だけでも意識する必要が高まっている領域です。


システムを活用して付加価値の提供を図る


右側のシステムには、中央左側にある既存のSoR型の個別システムに加え、その右側にあるSoI型のデータ活用基盤や、上部のSoE型のデジタルサービスなど、さまざまなシステムが配置されています。

「デジタル」というと、すぐにAIなどの新技術をイメージされる方もいますが、それよりも、上記のような技術を活用することでお客様にどのような付加価値を提供できるかが重要です。そういった意味で、右側上部にあたるタッチポイントでどのようなサービスを提供するかが重要になってきます。逆説的にいうと、いくら最新技術から新たな知見が得られても、それがお客様に付加価値として提供できないことにはあまり意味がないといっても過言ではないでしょう。

そして、これらのシステムを繋ぐ連携基盤があり、その重要な要素となるAPIが、これらの連携をより円滑にして、付加価値を増大させる重要な仕組みとなります。


全体像を把握しておくことの大切さ


今回、このイメージ図を紹介したのは、あらゆる企業がこのようなシステムを作らなければならない!と言いたいからではありません

正直、ここまで基盤が整っている会社は、1%あるかどうかだと思います。中小企業はもちろん、莫大なIT予算のある大手企業ですら、システムが多すぎる事もあり、これらの基盤は実現できていないでしょう。私の把握している限りでも、ごく一部のスタートアップのみが、こういった基盤を意識して構築していますが、スタートアップもこれらの基盤構成要素を全て持っているわけではありません。

今回、全体像を示したのは、目指すべき方向性を意識しておくことが大切だからです。

会社によって、システムに対して投資できる規模も優先度も異なる為、この基盤イメージが唯一の正解ではありません。しかし、全体像を把握できると、自分の会社は管理重視でSoRに力を入れるとか、サービスにおけるIT要素が重要なのでSoEに力を入れるとか、会社や現場の状況を正確に把握したいのでSoIに力を入れるとか、それぞれの経営者が優先すべき事が見えてきます

全体像を把握していて、自社のデジタル化の取り組みについて優先順位が定まっていれば、「デジタル技術のAIをやりましょう!」と社外や部下から提案を受けた場合も、そのタイミングや予算が判断しやすくなります。


重点領域でもお金はかけない


優先すべき事が分かると、まずはお金をかけずに小さく始めることも可能です。現代のようなクラウドファーストの時代で、これまでと同じ発想で個別システムを開発しているようでは、お金がいくらあっても足りません。

今回紹介したDX基盤のそれぞれの領域では、すでに様々なクラウドサービスが提供されており、そのほとんどが、無料で小さく始める事が可能な形で提供されています。こういったサービスをうまく活用する事で、やりたい事を具体化させた上で、投資をするか判断する事も可能です。

そして、こういった事を判断するためには、優秀なデジタル人材と相談できる事も重要です。社内にそのような人材がいる事が理想的ではありますが、現実的には社外の人材に適宜相談する方が、費用対効果も高いでしょう。また、そのようなデジタル人材にとっても、様々な企業のデジタルへの取り組み状況を知っている事が価値につながります。企業の根幹となる秘密情報は守りつつ、積極的に社外のデジタル人材を巻き込んだDXへの取り組みが様々な企業で活発化しています。

次回はこういった社内体制についてもご紹介したいと思います。