DX基盤の構築で注目されるフルスタックSEとは?

前回DX基盤の全体像を紹介しました。
1つのシステムを構築するのでも大変なのに、このような戦略的な基盤を構築するのは、かなり難易度の高い取り組みとなります。そして、その難易度の高さから、必要な人材の要求レベルも高くなります。特に、これまで大きな個別システムを従来型のシステム開発手法で構築してきたエンジニアにとっては、新しいデジタル技術を活用してシステム構築することは、難しい課題となるでしょう。


フルスタックSEとは~ SEの得意分野は意外と狭い ~


そのようなDX基盤の構築で注目されるのが、フルスタックSEです。
フルスタックSEとは、限られた専門領域に長けた一般的な SEと比べて、担当領域が広く、大雑把に言うと、「なんでもできるSE」です。そう言うと、「え?SEってなんでもできるんじゃないの?」と思われるかもしれません。

一般的によく誤解される事ですが、SEはみんな同じような人材ではなく、それぞれに得意分野があります。プログラムの開発が得意なSEや、システムのデザインが得意なSE、裏側のサーバ技術が得意なSE、データベースが得意なSEなど、さまざまなSEがいます。そして、それらのSEをまとめあげるプロジェクト管理が得意なSEもいます。

普段から数名のSEとしか接したことがなければ、こういったSEの違いには気づけないかも知れません。特に、SEではない方と接することが多いSEは、比較的コミュニケーション能力に長けていて、コンサルタント寄りの人材であることが多いと思います。


コンサルタントよりも希少なフルスタックSE


もちろん、コンサルタントも担当領域が非常に広く、さまざまな相談に乗ってもらうことができます。しかし、コンサルタントは対話に多くの時間を割くため、自分でシステムを開発することは、ほとんどありません。

一方のフルスタックSEは、担当領域が広いだけでなく、システムの開発もできる人材のことを指します。技術を知るだけでなく、実装できることも求められるため、より多くの技術習得に時間を割く必要があります。そういった意味で、フルスタックSEは、SEの中でも非常に限られた人材で、100人のSEと出会って、一人出会えるかどうかの人材です。

更に、存在がレアなことに加え、フルスタックSEには、人と話すよりも開発技術を磨くなどのより実践的な事が好きな人が多いので、辿り着くことが難しい人材です。そのため、“SE界のユニコーン”とも呼ばれています。

そんなフルスタックSEにもし出会えたら、滅多にない機会ですので、大事にしていただければと思います。


フルスタックSEかどうかは、知識量ではなく経験でしか見抜けない


おそらく「私はフルスタックSEです!」と話す人材には、たくさん出会えると思います。ですが、実は、真のフルスタックSEは自分の事を積極的にフルスタックSEとは言いません。

では、どうやって見つけることができるのでしょうか?

真のフルスタックSEかどうかを見分けるには、自分の担当したPJや経験値について質問するのがおすすめです。

このスタートアップのCTOとして設計から開発、運用まで一人でやりました。
こんなトラブルプロジェクトの火消しに入ってこんな風に解決しました。
このサービス、実は私が全て開発してリリースして、運用もしてます。

こんな話を聞けて、具体的な技術について幾つか質問してみれば、フルスタックSEとしてのスキルの高さが読み取れるでしょう。


フルスタックSEには仕事をお願いしにくい…?


さて、もし幸運なことに真のフルスタックSEと出会えても、すぐに仕事をお願いすることは難しいでしょう。なぜなら、フルスタックSEは、その経験と実績を買われ、仕事がひっきりなしに入ってきている状態であることが常だからです。そんな人材を採用したいとなると、困難を極めます。

一方で、フルスタックSEは自分の技術を高めることには積極的です。まとまった時間を割くことができなくても、週に数時間だけ支援に入ってもらうなどの協力を仰ぐ事はできるかもしれません。


フルスタックSEとの仕事でSEが育つ


そこまでしてフルスタックSEと仕事をすることが重要なのか、疑問に思われるかもしれません。しかし、フルスタックSEと仕事をすることには、仕事の内容そのもの以上に、社内人材の育成という大きなメリットがあります。

フルスタックSEは、その経験値の高さと幅広さから、社内SEにとって良い目標となります。また、社外からフルスタックSEを採用することに拘るよりも、長い目で社内のSEをフルスタックへと育成する観点の方が、現実的です。ロールモデルとなるようなフルスタックSEに出会うことで、社内のSEの意識が大きく変わることが期待できます。

数年前に比べて、ようやく日本においてもエンジニアが評価されるようになってきました。その一方で、アメリカなどに比べると、まだまだ評価されていないのが実態です。

DXという言葉は一過性のものかもしれませんが、エンジニアが重要であるというのは長期的なトレンドで、これからより重要になってきます。

現在のシステムも含めて、改めてエンジニアについて評価し、育成し、ビジネスへ貢献度を上げていくことが求められてきます。

その人材の理想像の一つとして、フルスタックエンジニアを育成することは、現在も将来も役立つことですので、ぜひ検討していくことをお勧めします。