デジタル時代のタッチポイント

今回は、デジタル時代のシステムのタッチポイントについてご紹介します。


UI、UX、タッチポイント


タッチポイントというと、また新しい言葉が出てきたと思われるかも知れませんが、タッチポイントはお客様と接するポイントという意味で、UIやUXに近い言葉です。

UIは、ユーザーインターフェースの略です。ITシステムに特化した言葉で、主にシステムの画面設計に対して使う言葉です。
UXは、ユーザーエクスペリエンスの略で、日本語にするとユーザー体験という意味です。一つ一つのシステム画面だけではなく、より長い時系列でのお客様の体験という意味で、システムデザインに使われる言葉です。
一方で、タッチポイントは、システムだけではなく、全てのユーザーとの接するポイントと言う意味で使われます。


従来は主に人が接してきたタッチポイントに変化


タッチポイントは、従来、お客様と接する従業員のサービスのことを主に表現してきました。
その中で、セルフサービスのようにあまり価値提供の高くない接客をロータッチ、対して、コンシェルジュなどのより顧客向けの価値提供の高いフルサービスをハイタッチと呼びます。

ホテルに例えると、ラグジュアリーホテルでは、チェックイン時の受付だけでなく、荷物を運んだり、ホテル内のレストランだけでなく近隣のサービスも含めて様々な顧客要望を聞いたりし、ハイタッチサービスを提供しています。一方で、ビジネスホテルでは、チェックイン/チェックアウトなどの必要最低限の接客しかせず、リーズナブルな価格に見合ったロータッチサービスを提供しています。


最近は、これらのタッチポイントにロボット等の自動端末を活用する場合に使われるテックタッチという言葉が出てきました。


人件費削減が見込めるテックタッチ


当初、テックタッチは、人件費の削減を実現する手段として導入が進みました。
ホテルであれば、自動機やスマホ(オンライン)によるチェックイン、スーパーのレジでは、セルフレジやセルフ決済の導入が進んできました。コロナ禍においては店員とユーザとの接触機会を減らすことができるため、こういったセルフレジやセルフ決済がより身近になっています。

業界に関わらず、この決済業務についてはテックタッチの領域が増えています。決済だけでなく、集金や決算も効率化が見込める電子決済は、現金よりも得られるメリットが大きいため、今後もテックタッチは徐々に増えていくでしょう。


テックタッチのユーザーメリット


テックタッチにするメリットは、企業の人件費が下がることだけではありません。

私は、5年前につたない英語のまま3ヶ月間米国で仕事をしていたのですが、その時、Uberには非常にお世話になりました。
英語が苦手な人にとって、タクシーほどハードルの高い乗り物はありません。ここに行きたいと英語で伝えることすらも難しく、地図を見せて身振り手振りで伝えるのも一苦労。おまけに会計もメーターを常に見ていないと、ぼったくられるか不安で気が抜けません。
ところが、テックタッチのUberであれば、GoogleMap上で行きたい場所をタップし、Uberを呼ぶだけ。しかも、目的地に到着する前から値段も確認できます。Uberに乗ったら、「よろしく!」と伝えて、後は日常の会話を楽しむだけ。

つまり、テックタッチは、コスト削減だけでなく、サービスのユーザー体験を向上させることもできるのです。


重要なデータが集まるテックタッチ


さらに、テックタッチの活用によりさまざまなデータを集めることもできます。
これまで、タクシーの売り上げは、熟練ドライバーの経験を基にタクシー需要の多い所を走ることで向上させてきました。しかし、Uberは、タクシードライバーから得られるよりももっと確度の高い、ユーザからの「ここにきて欲しい」というデータを集めることができます。そのデータの精度が高いため、移動の需要の変化に合わせて価格も変化させることで、需給バランスの最適化を図っています。

これまでハイタッチサービスを提供するには、お客様を知ることが最も重要でした。ハイタッチサービスになればなるほど、より多くのお客様の情報を把握することで高いサービスが提供できるようになります。テックタッチはこのお客様の情報を集める事ができます。

つまり、テックタッチはコスト削減だけでなく、売り上げやサービス向上にも欠かせない技術となっています。


テックタッチを広げるWebAPI


テックタッチは、仕組み次第では、様々なサービスやアプリと連携することができます。
Uberは、GoogleMapと連携し、GoogleMapからUberを呼ぶことができるようにするなど、非常にスムーズなユーザー体験を提供できています。

これを実現できているのが、WebAPIという、システム同士で連携できる仕組みです。この連携できる仕組みによって、Uberは自社の専用アプリだけでなく、GoogleMapや他のWebサービスなどと連携することを実現しています。つまり、自分たちのサービスを他のサービスと連携させることで、ユーザーへの提供価値をより向上させているのです。

このように、WebAPIを例とした他のサービスと繋がりやすい仕組みを作っておくことで、システムの裏側は1つのシステムでも、様々なタッチポイントを作ることができます。すると、最初はタッチポイントが専用システムの1つだけだったのが、WebAPIを介して、Webシステムや、スマートスピーカー、他の他社サービスの1つとしても組み込むことができるようになります。最近のデジタルサービスがさまざまなサービスと連携できているのは、こんな連携の仕組みがあるからです。

これらの連携の仕組みによって、デジタル企業はより多くのデータを集めることができるため、より高スピードでサービス品質を向上させることもできるのです。


テックタッチが企業成長を加速させる


テックタッチをただの効率化やコスト削減とだけ捉えず、他社サービスとの連携によって、より多くの顧客データを集めることで、より大きな競争力を得ることができます。データをもとに、人はより高度なハイタッチサービスを提供することができます。ホテルであれば、より個人に寄り添った接客へ、タクシーであれば、車内の対話サービスへ注力することができます。

タッチポイントの開発は、画面UXデザインだけでなく、長い目で見てより成長性や拡張性を支えるWebAPIとセットで開発することをオススメします。 サービスを利用する立場でも、自分が使っているサービスにはどのようなタッチポイントがあるのか、その中でテックタッチの要素があれば、それがコスト削減なのか、より高付加価値につながっているのか…意識してみるのも面白いでしょう。