大学院生活と人付き合い、そこから見える文化の違い

Feliz ano novo! 明けましておめでとうございます。

私は友人らとともに、ポルトで2回目の年越しを経験しました。日本とはクリスマスとお正月が逆転しているイメージで、ポルトガル人はクリスマスを家族と過ごし、年越しは仲間内でお酒を飲みながら楽しく迎えるようです。

さて、今回は「大学院での生活」「ポルトガルでの人付きあい」についてお話したいと思います。


ポルト大学の大学院での生活と卒業に対する感覚の違い


日本にいた6月頃にポルト大学文学部の近現代史コースに出願しました。東京の大学時代はスペイン美術史のゼミに所属していたので、引き続き歴史学を学びたいという気持ちがありました。コロナの影響で通常行われるはずの面接試験がなく、大学側が用意したフォームに記入する形式の志望理由書と履歴書のみで審査が行われました。7月には合格を頂くことができました。

修士の内容はかなり学部やコースによるのですが、私のコースはほとんど授業がありません

1年目は金曜の午後と土曜の午前の週2回しか講義がありませんでした。一方で、1回の授業時間は驚きの6時間!!集中力を保つのが本当に大変でした。各日程で担当の教授が入れ替わり、それぞれの専門分野について講義を行うという形式でした。学期末には、各自が修士論文のテーマの中の小トピックに関するレポートを提出し評価が行われます。講義内容に関連した試験がないため、出席率もそれほど高くない印象でした。

そして2年目は一切授業がなく、指導教官と相談しながら研究と執筆を進めています。
論文の指導教官とテーマについては、割と早いうちに決めることになりました。私の場合は、19世紀後半における日本とポルトガル間の領事関係史について扱う予定です。史料として両国の当時の記録や官報などを使うのですが、日本語ですら明治期の文書を読むのは難しいのに、時代の異なるポルトガル語を読むのは骨が折れます。今年夏の論文提出に向けて、頑張っているところです。

ポルトガルの修士は基本的に2年または1年半制ですが、実際のところ学士も含めて最短期間で卒業する割合はそれほど多くないと感じます。仕事との兼ね合いや、エラスムスという欧州域内の交換留学制度を利用する等して、それぞれ自分のペースで卒業していく印象です。
日本と異なり各企業の採用時期はバラバラのため、学生が一斉に就職活動をするということがありません。そのため学生時代にインターンを行い、卒業後は適宜関心のある選考に応募するという形だそうです。日本のように安定した将来設計のイメージは立てづらそうですが、その分柔軟に人生を楽しんでいるような印象を受けます。


ポルトガルの人付き合い、日本と似ているところと異なるところ


一般的に、ポルトガル人の対人関係は日本人に通じるものがあると感じます。スペインやブラジルなどと比べれば比較的シャイな人が多く、仲良くなるのに時間はかかるものの、一度打ち解ければとても気にかけて大事にしてくれます

修士のクラスメートは、ブラジル人二人とスペイン人、そして私を除きほとんどがポルトガル人です。外国人留学生に対し、興味がありそうににっこりと笑いかけはするものの、それ以上話しかけるのは気恥ずかしい、といった印象でした。そのため、初めは外国人同士で仲良くしていましたが、時間が経つにつれてポルトガル人のクラスメートとも話すようになりました。

昨年のコロナ規制が厳しかった間は、新しい人に出会ったり一緒に出かけるのが難しい状況が続きましたが、学部の先輩がマンツーマンで後輩の面倒を見てくれるメンター制度を活用したり、日本語クラスに顔を出すなどして、日本やアジアに関心のある人を中心に友人を作りました。ロックダウンが明けて以降は、ジムに通い始める、学部の大勢の人が集まる場に出向くなどして積極的に交友関係を広げています。

ポルトガル人との交友関係を広げていく中で私が最も驚いたのは、家族との結びつきの強さです。
日本では大学入学や就職など20代前後のタイミングで、できるだけ早く親元を離れる傾向があると思います。一方で、ポルトガルでは働き始めても、30代になっても、親と同居している割合が高いです。恋人も一緒に実家の子供部屋で、親兄弟と暮らしているケースも目にします。

家賃の高さに対する平均月収の低さなど金銭的な理由で若者の一人暮らしはかなり難しく、実家を出るにしても寮やシェアハウスが一般的です。その際、学校や仕事が終了した毎週金曜夜から週末にかけて実家に帰る人が多いです。日本の花金のイメージとはだいぶ違うと感じます。

親兄弟のみならず叔父叔母など親戚の誕生日も総出で祝うなど、友達づきあいに比べて家族の優先順位はとても高いです。私ははじめ、「姉の旦那さんの誕生日パーティーがある」「母に買い物に付き合ってほしいと言われたから、やっぱり行けない」など、自分の家族観との違いにかなり戸惑いました。
一方で、仲良くなれば家に招待してもらえ、同居しているご家族と割と簡単に知り合うことになるのは、ポルトガルならではのことだと感じます。

また東京にいた頃は、交通費を含めた交際費にとにかくお金をかけていたことを実感しています。どこに行くにしても、何を買うだとか何を食べるだとか、目的があったと思います。一方でポルトガルでは「散歩に行こう」「ピクニックに行こう」という集まり方が多く、あまりお金がかかりません。友達グループで集まって、軽くつまめるお菓子などを持ち寄り、近場の海岸や公園でゆっくりお喋りしたりして過ごすのです。正直はじめのうちは「何のために公園に行くの?」「海に行って何をして遊ぶ?」と常に目的を考えてしまっていたのですが、慣れてからは文化の違いとして、ただリラックスすることも大事だなと考えるようにしています。
ホームパーティーも一般的で、私も時々友人を家に招いて日本食を振る舞ったりしています。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回が私の最終担当回となりますが、ポルトガルと日本のつながりポルトガルの好きなところについてお話したいと思います。

■Memo:
研修の2年間を活用してポルトガルの大学院に通うという選択をした福田さん。
せっかくなのでポルトガルの大学院生活を紹介していただいたら、思わぬ違いが見えてきましたね…!
日本人とポルトガル人の人付き合いにおける似ている部分とびっくりしてしまう部分も、現地で生活してるからならではの視点でとても面白いです。
次回のポルトガルと日本のつながりポルトガルの好きなところもお楽しみに!

福田さん、ありがとうございました!