日本とポルトガル、好きなところ

私の担当が最終回となりました。3回にわたり、お付き合いいただきありがとうございました。今回は「ポルトガルと日本のつながり」「ポルトガルの好きなところ」についてお話したいと思います。


ポルトガルと日本のつながり


前回のコラムでも触れましたが、私は修士論文のテーマとして19世紀の日葡関係について扱います。今でこそ日本人にとってポルトガルは、ヨーロッパの端の一国といったところで、ポルトガルで有名なものと言われてもサッカーくらいしか思いつかないかもしれません。

しかし、ご存じの方もいると思いますが、初めて日本の地に足を踏み入れた西洋人は16世紀のポルトガル人です。戦国時代には南蛮貿易が盛んに行われ、「タバコ」「ボタン」など、日本語にはポルトガル語由来の単語が沢山あります。カステラエッグタルトなど、ポルトガル発祥の有名な食べ物もあります。意外と欧州の中でも関係の深い国の一つなのです。

ポルトガルに来て驚いたことの一つに、SUSHIの多さがあります。もちろん寿司が世界的に人気なのはポルトガルに限った話ではないのですが、街中の日本食レストランだけでなく、普通のスーパーの惣菜コーナーでも売っています。この国の食文化の中ですでに広く受け入れられていることを感じます。

また幸いなことに、現在までのところ人種差別的な扱いを受けたことはありません。日本出身だと話すと、かなりの割合で好意的なまなざしを受けます。ポルトガル人が日本を訪れた最初の西洋人だという話をする年長者の方は何人かお会いしましたし、大抵の若者には昔観ていたお気に入りのアニメがあります。

様々な国を旅行しましたが、この国では特に日本に対するイメージが総じてポジティブなものだと感じます。


日本の伝統文化を広く知ってもらいたい


さて、個人的には日本の伝統文化を世界に発信するという目標があります。グローバル化が進み外国に行ったり、国内でも異文化交流をしたりすること自体は珍しくないですが、そこで披露できる自国の文化を持っていると強いと思います。昔から海外への憧れと同時に、日本の伝統文化に対する関心があり、現在の職業ではどちらも両立することができると考えています。

小学生の頃に始めた日本舞踊は、ポルトガルに来た後も週1回のオンライン稽古という形で続けています。大学時代から5年間続けた茶道は、ポルトに長く暮らしていらっしゃる日本人の方の家でたまにお稽古を受けさせてもらっています。コロナウイルスによるテレワークの促進やグローバル化で、世界のどこにいても日本文化に触れられる仕組みはこれからも広がっていくと思います。

浴衣の着付けは日本舞踊で習っていましたが、着物の着付けは大学時代と社会人1年目に勉強しました。季節や場面に応じて、柄、形、生地の種類などを細かく考慮する必要があるため、日本では様々な種類の着物を少しずつ集めていました。ひとまずポルトガルには、万能な柄の春、秋、冬用の着物と、夏用の麻の着物、そしてお稽古用の浴衣を2着持ってきました。これからブラジルやアフリカで働くことになれば、夏用の着物がより活躍するのではないかと思います。

2021年3月にポルトガルのテレビ番組に出演する機会があり、そこで日本舞踊の小作品を披露し、茶道のデモンストレーション軽く着物の種類の説明を行いました。大学院など現地の友人にも観てもらうことができました。先ほども触れたようにアニメや寿司などはすでに日本文化として浸透していますが、伝統文化については未だ知られていないようで、放映後は日本に対する関心が深まったとの声を沢山聞きました。今後も様々な機会で日本文化を広く知ってもらえるよう精進していきます。


日本人の心に響くポルトガルの魅力


最後にポルトガルの好きなところについてお話します。

実はこの国を訪れたのは今回の赴任が初めてではなく、2019年2月に卒業旅行として、リスボン、ポルト、コインブラを巡りました。そのときの第一印象は、とにかくどの街も坂が多く、地図上では簡単に行けそうな距離でもかなり体力を使うということでした。ただしその分高台から眺める町並みは絶景の一言です。

実際に1年半程暮らしてみて、今でもポルトガルの景色に飽きることはありません。1回目のコラムで、ポルトの橋からの眺めを気に入ったとお話ししました。仕事柄リスボンに行く機会も多いのですが、比較的暗めの石が多いポルトの建築より更に明るめの色が使われていて、かわいらしい町並みです。

周りの国と比較して、ポルトガルにはどっしりとした背の高い石造りの「いかにもヨーロッパ」という建物が少ないと思います。アズレージョというタイルに彩られたカラフルで小さな家が隙間なく並んでいて、下町情緒のようなものを感じます。

町並みだけでなく、ポルトガルの雑貨類も日本人の「かわいい」センサーに響く力を持っていると思います。近年日本でもポルトガルの石鹸を目にするようになりましたが、パッケージのデザインが本当に可愛らしいのです。ちょっとした缶詰であっても見た目にはこだわっていますし、フィリグラーナ伝統衣装のデザインも、気取りすぎた感じではなく素朴な魅力があると思います。

食事についても、洗練された見た目とは行きませんが、素材を生かした美味しいものが多いと思います。特に美食で有名なアレンテージョ地方の都市エヴォラで食べた、子豚のほほ肉のローストが忘れられません。もちろん国民食として有名なバカリャウ(干し鱈)を使った料理も好きです。日本人にとっての難点は、ほとんどのポルトガル料理店で一皿の量が多すぎることでしょうか…。個人的には魚介類が大好物なので、海と関わりの深いこの国に暮らすことができて幸せです。

これで最後のコラムを終わります。少しでもポルトガル生活に魅力を感じて頂ければ幸いです。次回からご担当になる細矢さんはまた違った興味深い経歴をお持ちとのことなので、新たな観点からのお話を伺えるのを楽しみにしています。

◎ ポ ル ト ガ ル か る た 著 者 リ レ ー ◎

~福田恵理さんから細矢孝弘さんへ~

Q. 今後モザンビークで働く可能性も高いので、現地の生活に関するお話にとても興味があります!モザンビークとヨーロッパのポルトガル語の違いで苦労したお話などがあれば教えて頂きたいです。

■Memo:
2人目の著者として桐山シルバさんからのバトンを繋いでくださった福田さんのコラムも、ついに今回が最後となりました。
親しみやすい「文化」着目しながら、ポルトガルの魅力をたっぷり伝えていただきました。

福田さん、大学院の論文の準備もある中コラムを執筆してくださり、ありがとうございました!

次回からは、ポルトガルでMBAを取得し、独立準備を進めながらリスボンのフランス系企業で働く細矢孝弘さんが担当してくださいます。
お楽しみに!