なぜExcelがDXを阻害する要因となりうるのか?

今回は、会社でよく使われるExcelがDXを阻害してしまう場合がある事とその理由について述べたいと思います。

まず、大前提としてですが、Excelは非常に優秀なツールです。あらゆるデータを加工できるため、DXに不可欠な分析でも活躍しますし、ExcelもDXに欠かせないツールの一つであることには最初に言及しておきます。その一方で、データ活用におけるExcelの使い方によっては、DXが進まないケースがあります。

なぜこのようなことが発生してしまうのかを今回は解説します。


人にとって見やすいクロス集計データ


Excelでよく作成されるデータとして、クロス集計データがあります。

例えば、売上レポート。縦軸に店舗があり、横軸に期間があると、店舗や期間ごとに売上実績が比較できるため、非常に見やすい形式になります。さらに、この集計データに対して条件付き書式などでヒートマップのように色分けすると、更に見やすいデータになります。

このように見やすいクロス集計のデータですが、もし手入力で作成されていたら、恐らくDXが進んでいないと思われます。実はこのようなクロス集計は、データ集計のアウトプットとしては積極的に使われるべきですが、データの入力形式としては適していません


システムにとって扱いやすいデータ


先ほどのクロス集計のデータは、システムがアウトプットとして出力するデータとしては適していますが、システムに登録したり、蓄積するデータとしては適していません

もちろんクロス集計されたデータもシステムで保存することは可能です。しかし、デジタルの観点では、同じ売上実績のデータから、店舗や期間の軸で分析するだけでなく、商品ごとに分析したり、更に商品のカテゴリごとに分析したりと、一つのデータを様々な形で利用できるようにすることがとても重要になります。つまり、先ほどの店舗や期間別に一度集計された状態のデータだと、期間を月ではなく週や曜日別に集計したい場合は他のデータを準備しなければならないことが問題なのです。同じ売上実績データを異なる分析軸で出力する際に、それぞれのレポートを都度時間をかけて作成しているようでは、データ分析は進みません。


Record once, report anyway(一度の記録で、多彩なレポートを自動作成)


では、どのような形式で保存しておくといいのでしょうか?

売上データであれば、多様な分析ができるようにするには、下図のようなイベント形式のデータが理想の形です。

このデータは、日付、商品、数量、店舗といった、非常にシンプルなデータですが、テーブル形式で見るとなると非常に件数が多くなり、とても人が見やすいデータ形式ではありません。しかし、このような形式でデータを保存しておくと、同じデータから月次集計や週次集計、曜日別集計などの異なる集計データを出力することができます

更にBIツールなどのレポーティングツールを使えば、レポートの出力は自動作成させることができます。すると、データが記録されるたびにレポートが自動で作成されるので、レポート出力にかかる作業はゼロになります。


Excelは無駄なデータ加工を増やすリスクあり


もし、営業マンが毎月報告書を作成するのにExcelでコピペやグラフ作成で悪戦苦闘しているようであれば、それはDXが進んでいない兆候かもしれません。デジタルにとって、データ転記や集計処理は自動化できる仕事であり、人がExcelで集計する時間は無駄な仕事の一つです。

また、人によって異なる数字が報告されているような状況である場合は、恐らく正しいデータが管理できておらず、正しいデータを探す無駄な時間も発生しているかもしれません。DXがあるべき形で進んでいれば、そのような状態は避けることができるのです。


保存形式とレポート形式で異なるデータの理想像


上述したデータ形式の違いは、保存に適した形式と、レポートに適した形式と読み替えることもできます。保存に適したデータ形式は、同じデータからさまざまな軸で分析できるように、できるだけ細かいデータであることが求められます。一方で、レポートに適したデータ形式は、必要最低限の情報量で、見た目も色やグラフなどを使ってわかりやすくすることが求められます。


Excelは表計算ソフト


つまり、Excelはレポート作成に適した優秀なソフトですが、データ保存に適したソフトではありません保存データは、先ほどの図のように明細データとしてCSVやRDBに蓄積し、そのデータに接続する形で、Excelをデータの集計やレポートに使うなど、蓄積とレポーティングは分けて使うのが理想形です。それなのに、蓄積もレポートも同じExcelで管理しようとしてしまうと、社員が定期的にデータ加工を強いられてしまいます。Excelを使うとしても、蓄積データは別のファイルで管理し、データ加工時は参照するデータを変更するだけで済む形にしておけば、データ加工に時間を割かれることはありません


データ加工は間接作業ということを念頭に


DXにおいては、データから経営判断することが求められますが、データ加工自体はあくまで間接作業であり、データ加工自体で売上が上がる訳ではありません。データ加工に掛ける無断な時間は出来る限り減らすという事も、DXの重要な要素の一つです。

ExcelもDXに適した使い方をする事で非常に強い武器になります。一方で、使い方を間違えるとDXを阻害するツールになりかねません。

今一度、社内でのExcelの使い方について見直してみて、無駄なデータ加工に時間が割かれていないか確認してみる事をお勧めします。