76話「インボイス後の交際費について」

令和5年10月1日からインボイス制度が開始されました。今回は、インボイス導入に伴い交際費についての注意点を纏めたいと思います。

税務上の交際費は、交際費、接待費、機密費等の費用で、法人がその取引先等、事業に関係ある者に対する接待、供応、慰安、贈答等の為に支出する費用です。ただし、1人当たり5,000円以下の飲食費は、交際費から除かれます。ここでいう「飲食費」は社内飲食費を除きます。1人以上の取引先がふくまれる飲食費となります。

ここで注意点です。
5,000円基準が税制改正で令和6年4月1日から10,000円以下となりました。

最初に、税込経理であれば、支払った金額÷人数で判定するので、あまり難しくはないです。

例えば、4人で飲食代が40,000円の場合
税込仕訳で
交際費 / 現金  40,000
40,000÷4人=10,000円以下なので、交際費から除かれる。

注意が必要なのは、原則課税(簡易課税を除く)で「税抜経理」を採用している場合です。
簡易課税で税抜経理の場合には、経過措置の80%50%を使わないので、

免税事業者からの飲食代を4人で44,000円を支払った場合

交際費   / 現金 40,000
仮払消費税 / 現金  4,000
40,000÷4人=10,000円以下なので、交際費から除かれる。

飲食先がインボイス登録事業者の場合で、原則課税税抜処理

例えば、4人で飲食代が44,000円の場合
税抜仕訳では、
交際費   / 現金 40,000
仮払消費税 / 現金  4,000
40,000÷4人=10,000円以下なので、交際費から除かれる。
インボイス登録事業者の場合は、今まで通りで良いです。

飲食先がインボイス未登録事業者の場合で、原則課税税抜処理

例えば、

4人で飲食代が44,000円の場合(令和6年4月1日から令和8年9月30日まで

税抜仕訳では、
交際費   / 現金 40,800
仮払消費税 / 現金  3,200
令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%を仕入税額控除が出来るので、4,000円×80%=3,200円が仮払消費税となる。
40,800÷4人=10,200円なので、交際費となる。

4人で飲食代が44,000円の場合(令和8年10月1日から令和11年9月30日まで

税抜仕訳では、
交際費   / 現金 42,000
仮払消費税 / 現金  2,000
令和8年10月1日から令和11年9月30日までは、50%を仕入税額控除が出来るので、4,000円×50%=2,000円が仮払消費税となる。
42,000÷4人=10,500円なので、交際費となる。

4人で飲食代が44,000円の場合(令和11年10月1日以降

税抜仕訳では、
交際費   / 現金 44,000
仮払消費税 / 現金      0
令和11年10月1日以降は、仕入税額控除が出来ないので、0円が仮払消費税となる。
44,000÷4人=11,000円なので、交際費となる。

纏めると原則課税の会社で税抜経理の場合
インボイス発行事業者ではない飲食店での一人当たりの判定(交際費から除かれる金額)は、(1円未満端数切捨の場合)

令和6年4月1日から令和8年9月30日
税抜金額9,804円(税込金額10,784円)以下

令和8年10月1日から令和11年9月30日
税抜金額9,524円(税込金額10,476円)以下

令和11年10月1日以降
税抜金額9,091円(税込金額10,000円)以下

となります。

>簡易課税の会社で税抜経理の場合は、
令和6年4月1日以降
税抜金額9,804円(税込金額10,784円)以下

参考までに、税務では、10万円未満、20万円未満、30万円未満の判定があります。

10万円未満の場合で原則課税の会社で税抜処理

令和5年10月1日から令和8年9月30日
税抜金額98,039円(税込金額107,842円)以下

令和8年10月1日から令和11年9月30日
税抜金額95,238円(税込金額104,761円)以下

令和11年10月1日以降
税抜金額90,909円(税込金額99,999円)以下

となります。

簡易課税の会社で税抜経理の場合は、

令和5年10月1日以降
税抜金額98,039円(税込金額107,842円)以下

20万円未満の場合で原則課税の会社で税抜処理

令和5年10月1日から令和8年9月30日
税抜金額196,078円(税込金額215,685円)以下

令和8年10月1日から令和11年9月30日
税抜金額190,476円(税込金額209,523円)以下

令和11年10月1日以降
税抜金額181,818円(税込金額199,999円)以下

となります。

簡易課税の会社で税抜経理の場合は、

令和5年10月1日以降
税抜金額196,078円(税込金額215,685円)以下

30万円未満の場合で原則課税の会社で税抜処理

令和5年10月1日から令和8年9月30日
税抜金額294,117円(税込金額323,528円)以下

令和8年10月1日から令和11年9月30日
税抜金額285,714円(税込金額314,285円)以下

令和11年10月1日以降
税抜金額272,727円(税込金額299,999円)以下

となります。

簡易課税の会社で税抜経理の場合は、

令和5年10月1日以降
税抜金額294,117円(税込金額323,528円)以下

支払う事業者が課税事業者で税抜経理の場合
インボイス発行事業者でない飲食店への支払いは、経理処理に注意が必要です。