34話「実務で出た相談事例(貸付金)について」

今回は、相談事例を書きたいと思います。

社長様 「知り合い(従業員、取引先、親族)がお金に困っていて、お金を貸して欲しいと言っていますが、先生どう思いますか?良い方法ありますか?

教科書的な回答であれば、「貸さない方が良いです。他の人から借りてもらってください。」となります。しかし、実務では色々な背景があります。


お相手が従業員の場合


入社して1年以内でお金を借りたいと言ってきた場合は、断るのが原則です。勿論、災害等不測の事態で困窮する場合は、別ですが。ある程度勤務年数がある従業員については、借りる理由が適正であるかを判断し、そして、適正な借入金額も決めます。

会社から貸すのか、社長個人で貸すのかでも違いがあります。

会社で貸す場合は、議事録が必要です。金銭消費貸借契約書も作成してください。税務上の注意点は、議事録、金銭消費貸借契約書、金利がポイントです。特に金利については、災害等の場合は0%でも良いですが、それ以外の場合は、適正金利となります。適正金利については、今銀行から借りている金利を参考にすると良いでしょう。税理士に相談してください。また、賞与や役員賞与とならない様に対策をしましょう。役員貸付金は、税務署にも銀行にも良い印象を与えないので注意です。

社長個人で貸す場合は、「貸した金額が返済されなくても生活に困らない金額を貸してください。」とアドバイスします。人間の心理で、折角貸したのに何故返してくれないのかと怒りの気持ちでイライラします。最初から貸したお金が戻ってくる可能性が低いかもしれないと思っていれば、少しはイライラも落ち着くかもしれません。社長個人が借金してそのお金を貸付をする、家族や会社に迷惑をかける貸付はしない事です。


お相手が取引先の場合


取引年数や取引先の重要性で決めます。

先程と同様、会社で貸す場合は、議事録が必要です。金銭消費貸借契約書も作成してください。金利についても先程と同じです。返済期間は、なるべく短めが良いです。

今回だけ特別に貸します。2回はありませんと伝えるのも大切です。問題は、金額です。これが実務では難しいです。会社の経営に影響するような金額はダメですが、税理士と相談の上、決めてください。

銀行から借入がある中で他社に貸付をする事を転貸と言います。これも銀行には良い印象とはならないので、注意を要します。


お相手が親族の場合


このケースも背景が重要です。かなり根深いものもあります。通常親族が従業員で無ければ、会社からの貸付はありません。社長個人の貸付となります。親族だからこそ、金銭消費貸借契約書をしっかり作る事をお勧めします。トラブルや贈与税等のリスク回避の為です。


ポイントのまとめ


当たり前ですが、貸さない方が良いです。しかし、実務では、そうでは無い場合があります。

その際のポイントは、

  • 会社からの貸付であれば、議事録を作成
  • 金銭消費貸借契約書を作成(印紙を忘れずに)
  • 適正な金利
  • 会社や個人が貸せる適正な金額を相談

次回以降はちょっと視点を変えて、お金との付き合い方について書いてみます。

それでは。良い一日を!!