ポルトガルと働くvol.2-文化の壁と向き合う・語学講座-

ポルトガルの北部の町、ブラガ在住の桐山シルバ佐知子です。
前回は、私が仕事にしている「フィリグラーナのオンラインショップ運営」についてご紹介しました。
今回は、「仕事で苦労した文化の壁」と、もう一つの事業「ポルトガル語オンライン講座の運営」について、お伝えしたいと思います。


ポルトガル人との文化の違いに苦労


大好きな国に住み、自信を持ってお勧めできる商品を販売することはとても幸せな仕事だと思いますが、それでもポルトガル人との仕事上のやり取りは非常に苦労しました。今ではお互いの違いを理解し、困惑することはほとんどありませんが、最初は理解できないことが多く、よく気疲れをしていました。

例えば、

「大事な案件なのに返事が来ない」
「納期は、ほとんど守られない」
「サンプル制作するために見積りは前もってもらえない」
「休暇が長い」
「謝罪がない」 などなど・・・

これだけ並べると悪口のように聞こえてしまいますが、今では、なぜポルトガル人が特に悪気はなくそのような対応をしているのかが、理解できるようになりました。

日本で会社員をしていた時の感覚で、異なる文化の人たちと仕事をしていたことがまず誤りだったのです。
何事も、相手を理解することに徹することが大事です。心や考え方をオープンにし、相手の考えを聞き、理解しようとすると、ストレスなく、すとんと落ちる瞬間があります。

例えば、先ほどの問題で、「大事な案件なのに返事が来ない」というのがありましたが、これは「質問や要望が明確ではない。対応するには複雑すぎる。⇒対応すべき案件ではないので、返事はしなくてもいいだろう。」となるかもしれません。
私にとっては大事な案件でも、相手にとってはそこまで重要ではないこともあります。または、なぜ重要なのかが私の説明からは伝わらなかったのかもしれないのです。これを理解しようとせず、ただ単に「ポルトガル人は返事をしない!」と憤っていたら、仕事が進まないことがわかりました。

どの部分が明確でなかったのか、どうして対応したくないと思ったのかを理解し、紐解いていくことが大事だと身を持って学びました。

もう一つ例をあげます。

「サンプル制作をするために見積りは前もってもらえない」

これも日本ではあまりないことでしょう。正確な価格の提示は難しくても、おおよその価格は見積りできると思うのですが、フィリグラーナの工房ではサンプルを制作してから実際にかかった費用を請求すると言われ、最初は戸惑いました。
今ではいくつもの作品を作ってもらい、だいたいの価格感覚が私の方で培われてきたので問題ないのですが、最初は恐る恐る注文をしたものでした。

どんなに好きな国でも、仕事となると文化の違いに直面し、苦労することがあります。
そんな時には日本の常識を一度忘れ、まずは相手を理解することに徹することが、重要だと教えられました。


ポルトガル語講座の立ち上げとオンライン化


フィリグラーナの仕事を通して、ポルトガルイベントを開催したり、日本ポルトガル協会の事務局メンバーとして活動をしたりしていると、フィリグラーナ以外のお話を頂くことがあります。

その中で要望が多かったのが、ポルトガルのポルトガル語講座でした。

日本では、ブラジルのポルトガル語を学べる講座はたくさんありますが、ポルトガルのポルトガル語の講座はほとんどありません。そこで、友人で講師経験者であるポルトガル人にお願いをし、一緒にポルトガル語講座を始めました。当初は10人前後の小さなクラスでしたが、ポルトガル人講師の楽しい授業が評判になり、少しずつ口コミで広がっていき、約3年間で累計の受講者数は200人以上になりました。

もともとは東京で対面授業のみで開催していましたが、講師がポルトガルへ帰国することになりオンライン化を検討し始めました。この時は、オンラインでは参加が難しいという意見が受講生から出ていました。しかし、数ヶ月後に新型コロナウイルス拡大が深刻になり、対面授業は全クラス中止。2か月ほど様子を見ていましたが、状況が長引きそうであることから、全てをオンラインで完結できるクラス作りを始めました。

これが、現在運営しているオンライン講座の「ポルトガルのポルトガル語を学ぼう!」です。

授業日程が決まっており、リアルタイムで講師から学ぶことができます。さらに、いつでもオンラインで復習できるように、会員サイト上に授業録画や小テスト、映像資料を掲載しています。サイトへのアップデートや受講生サポートは、私以外にも3人のスタッフが日々行っています。

講師は3人になり、ポルトガル・日本・マカオから、非常に優秀な講師が担当してくれています。ポルトガル人講師の帰国により、ポルトガル語講座を継続することは難しいかもしれないと思ったこともありましたが、コロナで運営スタイルを変更することになり、結果としては選択肢が増え良かったと思っています。


好きなことだからこそ、仕事に


前回と今回の記事で、今の仕事について、そしてポルトガル人と働くことで衝突した文化の違いやその乗り越え方についてお伝えしました。

好きなことを仕事にすると苦しくなる、と言われることがあります。確かに好きだったことが疑問に思えてきたり、期待値が高いだけにガッカリしてしまうこともあるかもしれません。しかし、私の場合は、好きなことだからこそ、苦労やストレスを力に変えて乗り越えることができました
松下幸之助さんの言葉に『成功とは成功するまでやり続けることで、失敗とは成功するまでやり続けないことだ』という名言があります。成功するまでやり続けられるのは、好きなことだからこそ、と私は感じています。

これからも現在行っている事業やポルトガルに関わる仕事を続け、日本とポルトガル間のヒト・モノ・コトを繋げていきたいと思います。

■Memo:
ポルトガルと日本の仕事をする上での常識や、仕事に対する姿勢の違い、とても興味深いですね。
「ポルトガル人とは仕事ができない」とただ嘆き続けるのではなく、なぜそうなのか?どうしたら解消できるのか?相手の視点に立って捉えることの大切さに改めて気づかされました。

ありがとうございました!

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